![]() テラノに乗り始めた頃よく訪れていた伊豆に、数年ぶりに出かけてきた。 伊豆といえば、以前は首都圏周辺としては貴重な林道の宝庫だった。それが数年前から一 斉に林道閉鎖となり、我々にとっては魅力の全く感じられないエリアとなってしまったのだ。主 に不法投棄や植物の違法採取、バイクや四駆の事故などが理由だと言われるが、本当のとこ ろは定かではない。何にしても訪れても無意味な場所となってしまったから、なかなか行く機会 がなかったのだ。 実は伊豆半島にも、まだ一部の林道が閉鎖を逃れて残っている。旅の目的地として選択す るには今ひとつなので今までずっと見送ってきたが、この時期ほかの地方の林道はほとんど が雪の中。日も短い季節で、さらに今回は1日限定の日帰り旅だ。こういうときにこそ伊豆の林 道を見てみようと、実行を決めた。 ●土肥中央林道・上池林道 修善寺を経由し、国道136号で西伊豆方面へと走る。土肥峠を越えてしばらく進むと、土肥 中央林道への分岐に着いた。非常に目立たない脇道なので、訪れようという方は後に記載し た地図をヒントに行って欲しい。キノコのオブジェのようなものが目印だ。 いくつかの分岐を迷いそうになりながらパスしていくと、ようやく林道標識が立つ起点が現れ た。舗装工事の案内が出ているが、記載されている工事期間はすでに過ぎていて、問題なく通 行できそうだ。直進方向に分岐する道はダートだが、こちらは大洞2号線という支線で、見るか らに行き止まりっぽいので無視。 ![]() 舗装路の登りを進む。舗装といってもすでに傷みが激しく、あちこちでアスファルトが剥がれ て穴が開き、土が顔を覗かせている。こんな道ならダートのほうが走りやすいのだが…。 ![]() 起点から3キロ弱、右に上池林道が分岐する。土肥中央林道は相変わらずの舗装路面だ が、上池林道はいきなり未舗装なのがうれしい。ここで上池林道へと入る。 ![]() 今日は天気がよく、眺望に恵まれたこの林道からは見事な眺望が楽しめる。山の向こうには 駿河湾が広がり、その奥には田子の浦から由比にかけての海岸線、さらにその向こうには南 アルプスの山々が白い雪を乗せて横たわっている。伊豆でも数少なくなった通行可能なダート 林道だが、そんななかでもここは一番のお薦めだと思う。 ![]() 比較的近年に開削された道なのか、道路の規格はかなり高い印象を受ける。山腹を切り取 って造った道は道幅も広く、勾配も緩やかで走りやすい。眺望箇所は時々現れるくらいだが、 全線に渡って見通しの利くルートでなかなか気持ちよく走れる。 ![]() だんだんとマッド路面が増えてくる。この辺りの地質は比較的柔らかいのか、山土が崩れて 道路上に流出、それが雨や雪でヌタヌタになっているのだ。土は黄土色というかオレンジという か、ほかの地方で見るのとはちょっと違う色をしている。そういえばすでに閉鎖となった上佐ヶ 野林道(東伊豆町〜河津町)も、確か路面がこんな色をしていた。 ![]() 山をぐるっと回り、さっきとはやや違う方向の眺めが広がる。駿河湾が少し狭まった代わり に、眼下に土肥の街並みが少し見える。そして右奥には富士山の雄大な姿。これまたなかな かの景色だ。 ![]() 順調に進んでいたら…突然前方の路面がなくなっていた。大崩落で斜面ごと失われていたの である。すでに復旧作業が始まっているようで、目の前20メートルほどのところには重機が止 まっているのが見えるのだが、道がないのでは向こうに渡る方法もない。土肥中央林道との分 岐から約4.5キロ、ここで折り返すしかなかった。 ![]() やはりこの林道の一帯は不安定な地質のようだ。戻る途中に改めて見ると、あちこちの法面 が崩れている。少し雨が降れば簡単に崩落や落石が起こるのだろう。 ![]() 林道上のちょうど正面に富士山の姿が見える場所が1ヶ所だけある。やや木々がうるさくてク リアな視界とは言えないが、それでもやはり嬉しい眺め。途中で通行不能だったとはいえ、ダ ートが豊富な上に景色にも恵まれて、上池林道は伊豆の林道としては極めて貴重な存在とい えそうだ。 ![]() 土肥中央林道をさらに奥へと進んでみたが、突然路肩に工事中看板が現れた。さっき見か けた案内板とは異なり、こっちには今月末まで工事続行中とある。おいおい、話が違うぞ。一 か八かで先に進んでみようと思ったが、耳を澄ませばわずかに建設機械のものらしい音が聞 こえてくる。これでは望み薄だ。土肥中央林道もここで前進を断念。 工事看板には「舗装工事」とあったから、まだわずかにダートが残っていると聞いていたこの 道も、たぶん全線舗装になってしまうのだろう。また伊豆の貴重な未舗装林道が失われた。 ![]() 崩落で寸断されていた上池林道だが、このまま撤収するのもシャクなので、もうちょっと調べ てみることにした。麓の起点側から入って崩落現場まで行ってみようかと考えたのだ。 土肥中央林道を戻り、国道に出て土肥町へ。ここからは海岸沿いを南下して、矢木沢地区 付近から山へと入っていく。この辺の道には目印が乏しいが、国道136号沿いにある「ぱちんこ 亭一京」付近に「妙蔵寺」という案内標識があるので、これに従うといい。少し走れば住宅の横 に林道標識が見つかるはず。標識上の路線名は「上池林道」のシールが剥がれかけ、「上岩 穴林道」という文字が覗いている。 ![]() 舗装の道を登っていくと、今まで見えていた畑が消えて、あっという間に山中へと入っていく。 そろそろダートになるかなと思っていたら、なんと崩落箇所。上池林道は麓側でも寸断されてい た。 ![]() 仕方なく国道まで引き返してきた。しかし、まだあきらめない。上池林道の途中までは、別ル ートの支線があるのを知っている。最後の望みのこのルートでアクセスしてみることにした。 さっきの土肥中央林道起点方面まで国道を戻り、途中の水神橋から脇道へと曲がれば、あ とは沢沿いの道を真っ直ぐ進んで林道へと入れるはずだ。途中の林道標識には、上池林道起 点側の標識にあった「上岩穴林道」の名が記されている。どうやら上岩穴林道というのは本来 ここから矢木沢地区を結んでいた路線だったようだ。その後土肥中央林道までを結ぶ上池林 道が開通、上岩穴林道の一部区間が上池林道に編入されたという流れではないかと思う。 ![]() 細い林道は延々と舗装路のまま続く。平凡な道に退屈してきたころ、上池林道との三叉路に ぶつかった。右折は下りでさっきの崩落箇所を経て海岸沿いの矢木沢地区方面へ続く道だ が、「通行止め」「通り抜けできません」の看板がこれでもかとばかりに設置されていて、近づく 者を排除している。舗装路だということはわかっているので、別に興味は湧かない。申し訳なさ そうに左に分かれている細い道が土肥中央林道方向で、こちらは未舗装のまま。もちろん進 路はこっちだ。「この先崩土あり通り抜けできません」とあるが、さっきの寸断箇所を承知の上 で行くわけだから、気にしないで入らせてもらう。 ![]() ようやく上池林道未舗装区間の調査再開である。路面は特に悪くはないのだが、寸断されて いる関係で通行量が少ないせいか、枯れ枝が散乱していて荒廃した雰囲気も漂う。 ![]() 稜線近くの道をゆっくりと進む。周囲の林が少しずつ減り、代わりに地肌剥き出しの斜面が 多くなった。岩盤というより山土で、その脆さであちこちが崩れかけている。路上には赤い土が 堆積し、それが雨や雪によってぬかって泥沼のようになっている。乗用車でははまって身動き が取れなくなるはずだが、四駆のテラノは多少滑りながらも難なく通行できた。 ![]() そしてついに寸断箇所に到着。さっきの土肥中央林道からの路面が、崩落の向こう側に見え る。完全走破とはいかなかったが、これで上池林道をクリアしたこととさせてもらう。 ![]() ●舟山林道 土肥町から海岸沿いに県道17号を北上すると、舟山集落手前で右折方向に舟山林道が分 岐している。「夏刈波(なつがっぱ)」という看板が目印で、小さいがしっかり林道標識も立ってい る。 ![]() すぐに簡素な建物の脇を通過。これが起点の看板にあった夏刈波だろうか。帰宅後気にな って調べてみたら、夏刈波というのはゲストハウスの名のようで、少し登ったところに宿泊施設 があるという。ここに飼われている犬に吠えられて、逃げるように通過した。 さらに進むと、何軒かの民家が点在する場所を通り抜ける。別荘が多いのか、カラフルな壁 や屋根の色が目に付いた。 ![]() 別荘地を過ぎると人の気配がなくなり、山中へと入っていく。道はしっかりした舗装路が続き、 これはやっぱりダメかと思った頃、ようやく未舗装路が顔を見せた。よかった、とりあえずはダ ートは残っていた。 未改良区間はまだ道幅も狭く、林道らしい曲がりくねった道が続く。海もまったく見えず、眺め はよくないが、それでも舗装路でないだけマシ。この辺りで通行可能なダートは今や大変貴重 な存在なのである。 ![]() 舟山林道は全長4キロ程度の短い林道。あっという間に中間地点の峠に着いた。ここだけは かなり広い空き地になっていて、おそらく作業用のスペースとして利用されているのだろう。気 になるのは林業作業に使われている気配があまりないことで、どうも舗装整備の拠点として利 用されているのではないかと…。 ![]() 広場のすぐ先から海岸線方向へ下り始める。相変わらず眺めはないが、それでも前方にほ んのちょっとだけ駿河湾の青い海面が覗いた。海にごく近い林道だけに、視界が開けないこと は大変惜しいが、観光道路でないのだから期待する方が無理な注文だ。 ![]() 路面はまた舗装に戻り、そのまま数百メートル下ると海岸沿いの道路に出た。起点と同じ県 道17号で、舟山集落の山側を林道でぐるりと迂回してきたことになる。 ![]() ![]() 土肥付近の海岸沿いから見る駿河湾は美しい。真っ青な湾の向こうには、晴れ渡った空を 背景に、白い雪を頂いた富士の姿がそびえる。私は賑やかな東伊豆より、静かで景観に富ん だ西伊豆の方が好きだ。 ![]() このあと宇久須付近にある祢宜畑倉見林道を訪れてみたのだが、ここも起点に工事中の看 板が立っている。工事期間を見るとまだ終了していないようだ。看板があっても実際は工事が 休みで通れることもままあるのだが、今日は気配で無理そうだと感じた。路面に真新しい大型 車のタイヤ跡がついていて、どうやら頻繁にダンプが行き来しているようだ。おそらく作業真っ 最中だろう。少し待っていたら、予想通り大型ダンプがやってきて、林道の奥へと消えていっ た。ここは次回改めて再調査するとしよう。工事の内容が「舗装工事」だったので、いつまでダ ートが残っていてくれるか微妙だが…。 ![]() 最初にも説明したとおり、伊豆の林道は大部分が閉鎖されてしまっているというのが現状。 念のため猪ノ湯温泉付近から伸びている白川林道を見に行ったが、やはり頑丈なゲートにより 閉ざされていた。ここから河津七滝方面までダートが続いており、途中には諸坪峠という場所 があった。私がテラノで林道を巡り始めた頃にはまだ開放されていたのに、何とも残念である。 いつかあの峠をまた走りたいものだ。 ![]() ●年川沿いのダート(正式名称不明) チョコチョコと寄り道してみたが、通行可能なダートは見つからず、どんどん時間が過ぎてい く。2月のこの時期、まだ日は短い。まだ午後4時過ぎだというのに、もう日は西に傾いた。あき らめてそろそろ帰路につくこととし、最後に1本情報をつかんでいるダートを走っておくことにし た。修善寺の東側にある名称不明の道である。 修善寺から県道12号を伊東方面へと走る。年川を渡ってすぐの信号を左折。あとは川に沿っ てどんどん奥へ入っていくだけだ。しばらくは道幅が広い道だったが、突然細い脇道が現れ た。ここも忠実に川沿いに進むことにし、この心細い狭路へと入る。案内看板もないし林道標 識もなくなんとなく不安だが、地形図で確認するとこの道で間違いないので、気を取り直して前 進する。 おそらく市道扱いではないかと思われるこのダート、道自体はツーリングマップルにも載って いる(ただし未舗装表記はなし)。このまま年川沿いを上り、日産が経営するアウトドア施設「モ ビリティパーク」までを結ぶルートだ。 通る車はごく希のようで、路面はどことなく荒れている。それほど林業が盛んなエリアとも思え ないが、ワサビ田やシイタケ栽培などは行われているみたいだから、関係者がたまに通るくら いだろうか。 ![]() 途中軽トラがやってきて、ちょっとびっくり。たまたま道路脇に余地があったので難なく離合し たが、全体的に狭い区間が多いので、鉢合わせになったら面倒そうだ。 少し空が広く見えるようになって、ちょっとした渓谷のような区間に出た。それほどいい雰囲 気の場所とは言えないが、それでも多少視界が広くなってくれると精神的にはだいぶ開放され るものだ。 ![]() 年川の流れは小川のように小さくなって、道はそれを跨ぎながらさらに進む。地図を見るとモ ビリティパークも近づいてきたようで、全長4キロちょっとのショートダートはもう半分以上を消化 したようだ。この辺りまで来ると路面はさらに荒れを増して、雨水による深い溝ができていると ころもある。川を渡る部分はコンクリート製の橋のようになっているのだが、ここは水路が塞が ってしまったのか、路面の上を水が流れている。四駆なら問題ないが、ちょっと段差が大きい ので乗用車だと路面に干渉するかもしれない。 ![]() 舗装路に出れば、そこはモビリティパークのキャンプ場のすぐ脇。シーズンオフで利用者はい ないようで、せっかくの広いスペースも寂しい眺めだった。 ![]() モビリティパークといえば、四駆乗りにとってはオフロードコースの存在でよく知られる施設で もある。道路はそのすぐ近くを通過していた。もちろんこの時期この時間ということで、すでに人 気はない。それにしても日産が運営するこのコースだが、肝心な日産にここを走れる車が皆無 となってしまったことは複雑な気分だ。これからはほかのメーカーの四駆ばかりが走り回ること になるわけで…日産は海外モデルの輸入でもいいから、ラインナップに四駆を残さないとまず いんじゃないのかな。 ![]() ![]() 日帰り小旅行ということで伊豆を選んだが、少なくとも林道を走る目的で出かけるにはちょっ と物足りないエリアのようだ。昔のように林道を走れる日が再びくることを信じて、待ってみたい と思う。
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